赤信号、電線と空の間
朝はわりと早めに起きて、シャワーを浴びて、テレビをつけて、パソコンを立ち上げ、コーヒーを入れて、髪を乾かす。
ニュースが天気予報と一面記事あたりを終えると、ミュートボタンを押してテレビを時計にしてしまい、CDのスタートボタンを押し、歯を磨いたりする。 余裕あるはずなのにいつの間にかギリギリになってしまい、結局早足で駅に向かう感じになってしまう。 今日もそんな朝です。 コンビニからソイジョイ(最近ハマってる。大豆ですから。)とミルクティーを袋にぶら下げて出てくると、赤信号。 朝ひっかかっる赤信号は痛いよね。 時の流れは、人がたくさん乗った気まずいエレベーターの様に早さを変えて、遅くなってしまう。 野球のファーストランナーみたいにじりじりとリードしていたサラリーマンは、ついに隙をついて駆け出してしまった。 あ、ずるいぞメロス。 変わったばかりの赤信号をじーっと見つめても、早く変わるわけでもなく。 ふぅ 「この鳴き声は…」と空を見上げると、ツバメがヒラリとターンした。 ペチャクチャペチャクチャペチャクチャ……ゲゲゲ おおー もうそんな季節なのか。 僕はツバメが大好きなので、気持ちがパッと晴れやかになった。 パパイヤ、マンゴーといった南の国(たぶん)で越冬して、またその途方もない距離を戻ってくるという。 しかし、よくまあ間違えんで同じ場所に戻って来るよね。 毎年ほんとに感心するよ。 もし僕がツバメだったら、寝台列車の上とかに乗っかって「イェーイ」とか言って楽してしまいそうだ。 涙があふれてしまうようなきれいな海を目下に、天気予報も地図も持たずに。 毎年あんなにたくさんのツバメが旅立っても、帰ってくるのはわずかな数。 命がけの旅にどのくらいの月日がかかるかは分からないけど、黒いビーズのような小さな目に映った道中の世界を自分なりに想像してみる。 見たいなぁ よく帰ってきたね。 「お帰り」としか言えんよ。 小学5年か6年の夏だった。 いつもの駄菓子屋の前で小遣いを使い果たした僕らは、暇を持て余していた。 サラウンドな蝉の鳴き声はより暑さを引き立て、時はやっぱり午後を長くしていた。 駄菓子屋の石段にダラダラと座りこんでいた僕らは、そのうち目前にあった消防団の土塗り倉庫の軒に作られた、ツバメの巣について議論を始めた。 『あの巣は、空き巣なのか?まだ雛がいる巣なのか?』 高い場所に作られた巣の中は覗けず、雛も見えず、『空き巣』だと判断した僕らは倉庫の脇からずいぶん長い丸太の棒を持ち出してきて、巣をつついて壊してしまったんだ。 カラカラに乾いて見えた巣は、バラバラと意外にしっとり壊れたのを覚えている。 同時に、巣立ち間近だった数羽の雛が飛び立った。 だけどまだ飛べるわけがなく、バサバサと、滑り台のように緩やかな曲線で落ちていった。 やがて雛を両手の中に、四方散らばった僕らは戻ってきた。 誰も口に出さなかったが、なんだかすごくいけないことをしてしまったという気持ちは一緒だった。 その後、僕は雛を死なせてしまった。 あの時、丸太の棒を持った僕は直感的に「あの巣が空き巣ではないこと」に気づいていたんだ。 だけども心の中の反対にフタをして、気づかないようにしてしまった。 電線と空の間、再びペチャクチャとツバメが横切っていく。 左右にある信号が黄色に変わり、みんなじりじりとリードし始めた。 そして対面する信号が青に変わる前に「もういいでしょう」と、僕らもメロス。 商店街と呼べるほど店が並んでない通りをツカツカと行く。 建物に挟まれた電線が行き交う狭い空だけど、僕も町も知っている、きっとみんな知っている。 身内や親しい友達に子供が生まれた時のような、何気ないようでわりと暖かい、そんな季節が今年もやってきているということを。 夏の終わりまでうんと空を見上げることでしょう。 最近は雨が多い。 雨の日の部屋は落ち着いていていいよね。 コーヒーを入れるとなんだかクッキーが欲しくなる。 雨天の切れ間のある日、ちょっとだったけど素敵な時間が作れました。 少しずつ、やっと落ち着いてきたこの頃です。
by a-kessay
| 2008-04-14 21:34
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