『時々タイムスリップ』 君の故郷、僕の雨宿り
さっき降り始めた雨が強くなってきた。
電車を降りて改札の前、なかなか飛び出せないんだ。 踊る水たまりと、雨のにおい。 僕の前をヒュンとツバメが戻ってきた。 蛍光灯の上に、今年もまた帰ってきたツバメ達が作った巣。 バタバタとした朝や遅い帰りでも、毎日そこを見てしまうんだ。 なにもこんなにうるさい所じゃなくても…と思うのだけど、やっぱりこの蛍光灯の上じゃないとダメらしい。 やがて秋になり、この改札で生まれて育ったちびツバメ達は南国へと渡る。 青い海、緑の島、きっとトロピカルな大地を見た時になんて思うだろう。 おれやったらそりゃもう帰ってこんよ。 それでもまた帰ってくるツバメ達に、「ありがとう」と言って毛虫の一匹でもごちそうしたい気分だ。 どんな場所でも故郷は故郷、変えれんっちゃろうね。 僕も故郷を思い浮かべてみる。 一時間に2、3本しか列車がやってこない木造瓦屋根の田舎駅にも、毎年ツバメ達が巣を作るんだ。 しばらく帰ってないなぁ。 ヒュンとまたツバメが戻ってきた。 僕があんまり上ばかり見ていたので、となりの人もつられて上を見てしまったよ。 さて、雨、雨、雨。 あじさい達も笑ってる 【雨宿り】 知らぬアパートの自転車駐輪場にて休憩。 しかたのない時間やね。 しかしみごとな雨だ。 落ち着く。 街の騒がしい音も半減し、鳥たちも声を出さなくなる。 鳥もきっと鳴く気にならんっちゃろうね。 このまま街に溶けてゆきそうだ。 小降りになったと思ったら、雨はあっとゆう間に去っていった。 高い雲と、低い雲と、見上げる僕。 街にはまた、活動の音が戻ってきたよ。 さあ行こう、駅まであと10分。
by a-kessay
| 2006-05-28 10:42
|
|
ファン申請 |
||