皐月の木陰
緑がやわらかい。
そんな心地よい5月、午後の公園で休んでいた。 「おーい、レモンティーの鍵もって来て!」 遠くから聞き慣れない言葉が飛び込んできた。 レモンティーの鍵…? キラキラ黄色い光りの中でクルクルと回る、アンティークな鍵が頭に浮かんだ。 おいおいそんな素敵な鍵でいったい何を開けようというんだ。 声のする方を見てみた。 どうやら、自動販売機スタッフが飲み物を補給しているようだ。 先輩と新人といった2人が動いていた。 やがて開かれた自販機からガチャコン、ガチャコンと飲み物を落とし込む音が聞こえ始めた。 レモンティーの鍵か… 「バカ!これはミルクティーの鍵だろ、黄色いタグのやつだよ。 急いで持って来い!」 はぁ、はぁ、、 「これっすか?」 「バカ!これはデカビタの鍵だ。 黄色くても泡のマーク(炭酸)が入ってるだろう。」 「もー、先輩が行ってきて下さいよ」 「ったく、最近の若いもんは」 なんてね。 僕は『さくらんぼティー』を飲んだ。 レモンティーが飲みたくなって自販機へ行ったのだけど、一緒に並んでいたさくらんぼティーのボタンを押してしまった。 5月のベンチは、木漏れ日がたくさん降り注いで気持ちがいい。 季節が進みやがて葉が生い茂ってくると、すっかり日陰になってしまうしね。 その時期その時期のよさを満喫するのだ。 風が吹くと地面の木漏れ日は、さざ波の様に揺れた。
by a-kessay
| 2010-05-13 06:46
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